パワステ取り付け

130型以降のNSXでは、MT車でもオプションでパワステ装着が可能でしたが
初期型ではAT車にしか設定がありませんでした。
無ければ無いでそれほど苦もなく走れるんですが、
やはり すえ切りや車庫入れ とくに下りながらの車庫入れフルステアや
Sタイヤを履いているときなんかは
つくづくパワステが欲しくなります。
今回装着した車輌はオーナーが女性なので 特にパワステを欲しがっていて
一度チャレンジしてみたかったため
作業を行うことにしました。
幸い パワステ付きのType-Sで部品取り車輌からAssyで部品購入できたため
平成3年式のクーペMT車に
MT用パワステを 追加購入部品無く取り付けが出来ました。


入手してきたMT用パワステユニットAssy
ハーネスは切断されているため 延長が必要だった。
取り外す際には出来る限り長く切断してきた方が後々楽。


ミッションに取り付けるデファレンシャルスピードセンサ。
このセンサーでデフのリングギア外周速度を測っている。




ステアリングの回転をラックに伝えるユニバーサルジョイント。
これはマニュアルとパワステでスプラインの太さが違うので 、
パワステ用を使う
コラムそのものはマニュアル用でOK。


ジョイント取り付け位置は
クラッチ&ブレーキペダルの間あたりに有ってカバーを外すと見える。
ラックを外す前にこれを外しておく。


マニュアルステアリングのラックを外す。


上がマニュアルステアリングラック
下が電動パワステラック。
大きいけどアルミ製なので見た目ほど重くはない。




パワステラックを取り付ける。
ラック以外の部品は全てそのままで組める。
干渉物もなく完全ボルトオン。


車速信号を取りだして
ケーブルでパワステ制御ユニットに配線する。


ボンネット内の作業


まず、ブロアユニットを取り外す


外したブロアユニット
シロッコファンでヒーターやエアコンへ風を送っている。
この中にはもの凄い埃がつまっているので
良い機会なのでエアガンで掃除しておくと良い。


ブロアユニットを取り外すと室内が見えるので
作業性が良い。


助手席足下のカーペットをめくると
フットバススピーカーがあるのでこれを外す。


スピーカーの下にパワステ制御ユニットを取り付ける。


ブロアユニットを外すとそこから手が入るので
作業性良好。ラック側とコントロールユニットを配線して
車速信号も接続する。
配線図が有れば特に難しくない作業。

以上でおおむね作業は終了
フロントのトーが大きく狂っているはずなので
この後アライメント調整を行って動作確認して終了。




取り付けてみて・・

実際取り付けを行ってみると
これはもう 無ければ耐えられなくなるほど便利で快適になります。

NSXの電動パワステは
アシスト力が比較的小さくて乗用車のように不自然に軽くならないので
違和感がまったく感じられません。
車速によるアシスト量の変化もよく考えられていて
スポーツ走行レベルのスピードになると、ほとんどアシストは無くなります。
また、荒れた路面でのキックバックも減少して
非常にクルマが扱いやすくなります。

劇的に体感できるほどではないんですが
ステアリングのレシオもパワステの方がクイックになっているそうです。

パワステユニットは確かに重量物なのですが、
取り付け重心位置は低いし
ノーマルユニットとの重量差となると
致命的に車重が増えるわけではないので、
競技オンリーでなければデメリットは全くなくて
非常に快適になるので
今回の作業で私も自分のNSXにパワステを付けよう!と心に決めました。

問題点は
パワステユニットは新品で買うと非常に高価であること。
新品部品で揃えたら軽く50万円を超えるので
安価に組むには中古部品を使うことになりますが、
ハーネス類は他の電線と一体になっているため
パワステ関連ハーネスだけをきれいに車輌から外すのは難しい。

また、初期型AT車に採用されているタイプは
コントロールユニットがAT制御ユニットに対して信号やりとりしているため
そのままMT車に問題なく取り付けられて
正規の制御を行えるかは現段階で不明です。

110型以降のNSXからはオプションでMT車もパワステの設定があったため
ラック&コントロールユニットがAT、MTで共通になっています。
AT制御ユニットの代わりにパルスユニットを使うことで
車速信号を入れられるので、
AT用のパワステがMT車に問題なく移植が可能です。

初期型パワステラックと後期型制御ユニットの組み合わせ、
あるいは初期型ユニットとパルスユニットの組み合わせなど
現段階では不明な点も多いので
今後 分かってきた段階でこの作業記録は変更していく予定です。



旧型パワステユニット取り付け 030413追加情報

100型AT用のパワステラックと
120型MT車のコントロールユニットAssyが手に入ったため
私のNSXに組んでみました。


前期型のパワステコントロールユニットは
左のコントロールユニットと右のパワーユニットに分割されています。
後期ではこれが一体になってかなり軽量化されているので
この前期物だと重量は結構あります。
パワーユニットには大きなFETとリレーが入っていて
ラックのモーターを駆動しているんですね。
ユニットの大きさは初期型故に、FETの発熱に対する安全マージンでしょうか。


エアコンのコントローラーにも貼ってある例のシールがここにも。。
同じメーカーみたいですね。


これはラックから出ているコネクター。
新型は回転センサーが省略されて1個になったけど
初期&中期型は2個カプラーがある。


今回専用ハーネスが手に入らなかったため
解体車から使えるコネクターを探してきて使う事にした。


整備書の配線図にも
パワーユニット側コネクターの配線色が出ていないため
これを調べるために初期型AT車を見て
配線色を調べる。
純正ハーネスが手に入ればこんな苦労はいらないんだけど
ハーネスは10万円以上する。
そして、車輌側ハーネスの配線色とパワーユニット側の配線色は何故か異なる。


作業日までに準備したハーネス類。


ラックの取り付けは
前期後期とも同様で 特に問題なしのボルトオン。


コントロールユニットは
グローブボックスの裏あたりの指定の場所に取り付けて、
パワーユニットはフットバススピーカーの下に取り付ける。
作業中の為もあるけど後期物に比べると配線は多い。

車速センサー及びパルスユニット等の取り付け及び部品は
後期物と同様。



取り付け後フィーリングは??

実際 前期後期を乗り比べてみると
やはり後期物の方が制御のきめ細かさと素早さが良くなっており、
そして車速が上がった際のアシストの終わり方が
後期の方がかなり自然に仕上がっています。
前期は40キロくらいでフッとアシストが終わったのが分かって
ステアリングが重くなるけれど、
後期は60キロ近辺で自然にアシスト感が無くなります。

NA1・NSXのパワステは
構成的に3種類あって
100〜120型はコントロールユニット&パワーユニットが分離型で
130型から1体になっています
そして、100〜130型まではラックのカプラーは2個でラックは共通。
NA2及びNA1の140型からは回転センサーが廃止されて
ラックが仕様変更されてカプラーは一つ。
つまり、ラックは2種 制御ユニットは3種ある事になります。

KSPでテストしたのは
110型用の前期とNA2用の後期だけなので
中期に当たる130型用のユニットがどのようなフィーリングかは
現在不明です。
先日
アキュラ用の130型コントロールユニットを入手したため
これを後期物ラックに使ってみたところ
一時的にアシストはするものの、すぐにエラーが出て停止してしまいました。
回転センサー入力が無いためだと思われます。
これを私が組んでいる100型ラックに組み合わせたらどうなるかという事を
次回はチェックしてみたいと思います。



前期後期間での動作検証 040102追加情報





後期ラックに前期及び中期ユニットの組み合わせは
後期になってラックから回転センサーが廃止されているためにNGになりましたが、
前期ラックに中期及び後期ユニットの組み合わせはどうか?を
検証してみました。

前期ラックに中期コントロールユニットの組み合わせは
130型NA1が標準でそれに当たるため
動作上問題ないことがあらかじめ分かっていましたが
お客さんのNSXで試した結果 やはり問題有りませんでした。

ところで
前期、中期、後期で実際の所どのようにフィーリングが異なるか?
ですが
あくまで私の感じたことですが 以下のようになります。


☆まず、120型以前のNA1に採用されている初期型パワステですが
 これはコントロールユニットがパワーユニットと2分割で、
 初期型AT車及び私のNSXに組んだモノがそれに当たります。

☆これに対して
 中期型パワステはコントロールユニットが
後期と外見が同じで1体になり、
 実際の操舵フィーリングでは初期型と大きく変わらないけれど
 アシストの終わり方が後期同様滑らかになったようです。
実走行ではなく後輪リフトアップで検証すると、
 初期型は40〜60キロくらいでほとんどアシストを感じなくなるけれど
 中期は80〜100キロくらいでアシスト感が無くなっていきます。
 ラックは前期中期で同じモノで、
 コントロールユニットのみが変更されたのが中期になります。

☆そして、NA2のデビューと共に採用された後期型ですが、
ラックに内蔵されている
回転センサー(操舵方向と操舵速度を検出している)が廃止されて、
トルクセンサーのみで操舵力と回転方向を検出しています。
コントロールユニットは外見こそ中期型と同じですが
回転センサー廃止に伴い内部は異なります。
パワーアシストの体感的には、
中期型で見られた
車速に対するアシストの終わり方の滑らかさに加えて、
ステアリングを回して操舵力を入れた際の
アシストのレスポンスが格段に向上しています。
前期&中期は
ステアリングを回すとホンのちょっと(ステアリング外周で数ミリ)遅れて
パワーアシストが始まります。
これが体感で分かるのは駐車場で据え切りする時くらいなのですが、
人間の感じるフィーリング的には
後期の方が遅れが無い分 自然な操作の軽さに感じるんです。

つまり、前期と後期では
車速に対するアシストの終わり方の滑らかさと、
極低速域おけるアシストのレスポンスの点で
二つの体感できるメリットが有ることになります。



前期でも後期でもパワステが付いていれば操作は楽で、
車速が上がればアシストは切れるんだから
どちらでも良いと言えばそうなんだけど、
比較してみると据え切りや極低速域で
後期パワステの方がアシストが滑らかなんですね。

これが
コントロールユニットによるモノなのか、
ラック側の性能向上のためなのかが知りたくて
私のNSXで実験してみました。


まず、私の前期ラックに
後期コントロールユニットを組み合わせてみます。
ハーネスを一時的に加工して
ラックは前期のままでコントロールユニットを後期にして動作チェック。
とりあえずエラー等は無く、正常にアシストを行う事を確認。
しかし、操舵力に対する応答性は前期&中期と同様で、
後期らしい滑らかなアシスト感にはなりませんでした。

後輪だけリフトアップしてステアリングを左右に切りながら車速を上げて
アシスト力の変化をチェックしてみると、
車速に対するアシスト量の変化は中期&後期と同様に感じる。

結果、
前期ラックに後期コントロールユニットは組み合わせ可能だけど、
得られるのは中期的なフィーリングで、
後期らしい初期の応答性は得られないと言うことが分かりました。

後期の滑らかなフィーリングは
後期ラックのトルクセンサーが優秀だからかもしれない。


後期パワステの魅力は
アシストの終わり方よりも滑らかな初期応答性が大きいので
とりあえず私のパワステは初期ユニットのままにしておくことにして
コントロールユニットは前期のものに戻しました。

NA1に後付でパワステを付けるのは可能だけど
入手性の良い前期AT車の中古を利用するのがコスト面で最も有効で、
もし新品を買うなら
全て後期で揃えるのが最良であることになります。
コスト面では
新品の場合前期が一番高く、中期後期が同じになりますが
フィーリングの点で後期に軍配が上がりますね。


以上で現段階で採用されている
NSXのパワステ関連の検証&データ収集を終わりにします。

最後に
NSXのパワステに関して興味を持っているオーナーは多数いると思いますが
これは組み込むことで劇的に運転が楽で楽しくなります。
デメリットは有りません。
重量増加も僅かです
後期型ABSに換装すれば差し引きでほとんど無に等しいでしょう。
コストはかかりますが、お勧め度は非常に高いですね。


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